ティンダーと花江夏樹

 

春休みに入るとほぼ同時にティンダーを始めた。

 

本来であればリベルエンタテインメントの新作「A3!」を始めていた頃合いだが、ティンダーに思いの外のめりこんでしまい、A3!にハマるのが遅くなった。

 

 

 

 

この8ヶ月、私は通知依存症になっていた。

花江夏樹似のメンと恋人未満の関係が8ヶ月続き、その間毎日来る日も来る日も「今日暇?」「そろそろ会いたいんだけど」という連絡を待ち続けたのだ。そのため彼氏もろくにいない分際で毎日おしゃれをして学校に行っていたのだった。放課後呼び出されてもすぐに行けるように。

 

夜眠りながら途中で起きて通知画面を見るというのを夏からずっとやっていた。夢の中でラインがきて慌てて返事をする夢も見た。何度か見たところで明晰夢を体得し、ラインが来る夢を見ると「夢なんだとわかっていてもついつい返事しちゃうな〜起きてから死にたくなるんだろうな〜ってところまで鮮明に思い出せるんだよね、死にたい」などと寝ていても気が休まらない日々だった。

 

 

そんな日々を終わりにしたかったわけではない。私は今でも連絡を待っているし連絡先を消すこともままならないので。

ただ、いつまでも待っていても仕方ない、春休みなんだもの、誘ってみなきゃ、と意を決して連絡をして既読無視をされた時に何かが崩れた。

 

誰でもいい、なんでもいい、とりあえず通知が来ればいい…。

 

 

そう思っていた時に友人がティンダーを始めているのを見た。暇な女子大生がやっているので知っていたが、身近な人が始めるとなるとまたイメージが変わって来て、出会い系というイメージはすこし払拭される。

どれくらいこれはのめりこめるアプリなんだろうか、と思い始めた。

 

通知がめっちゃ来る予感がした。

 

 

よくわからないがとりあえずそこそこに盛れたプロフィール写真にすると、かわいいね、頭いいんだね、というメッセージがたくさん届いた。通知が来るようにしたら、朝起きると90件とか、瞬く間に、そんな感じになった。

 

花江夏樹がタイプです」と書いていてもウェイとマッチできるのだ。早稲田大学構内であれば到底出会えなかったようなウェイが、慶應ボーイが、青学ボーイが、陰キャの私をライクし「かわいいね」などと言ってくれる現実。驚いた。私需要あったんだ。オタクだけど関係ないんだ。

 

花江夏樹に似てるって言われます!」「顔がですか?声がですか?」「指の数とか!」「ふーん!私花江くんの指の数のファンじゃないんですよ」「そっか…青春は残酷だな…」などと送って来る少年もいた。わざわざ花江夏樹で調べてくれたらしい。

 

他にも三代目J soul Brothersみたいなウェイから「花江夏樹って、東京喰種の金木くんですよね?」というメッセージが送られて来たり、金木くんのコスプレの青年からスーパーライクをされるなど、とにかく花江夏樹大勝利みたいな日々が続いた。

 

 

そんなときたまたまものすごく好みのイケメンを見つけてしまったのである。

釣り垢かもしれないと思いつつ壊滅的に顔の好みはどうしようもないので、会うことにした。

リスクのないチャンスはないと思い、家にいった。

 

明らかに学生の部屋とは思えない豪華な内装に違和感を覚えつつも、部屋に飾られた色紙に書かれた彼のあだ名をググって見ると読モであることが発覚した。

 

 

最初にティンダーで釣ったメンが読者モデル。うーん!ついてるぞ!無課金SSR!などと思いながら久々にいい気分で家に帰った。

 

家に帰り彼のツイッターを改めて見返すと、東京喰種の金木くんのコスプレをしていた。そっか、みんな花江夏樹が好きなんだな。私も花江夏樹が好きだよ。